凡(およ)そ軍は高きを好み下(ひく)きを悪(にく)み

******

現代訳

 軍隊が留まるところとして相応しいのは、低地より高地がいい。

 日当たりの悪いところよりも、日当たりのいい場所がいい。

 健康的であらゆる疾病が発生しないのが、不敗の軍隊の条件というものである。

 兵陵や堤防などは、後方と右翼が障害物で遮られ日当たりのいい場所に陣取る。これは、自軍に多くの利益をもたらし、地の利を得ることとなる。


******


戦いは高い位置にいる方がより有利に進められる。

*交渉では相手を見下ろすような態度を心がける。

 敵と相対するときは、その位置どりが大きなポイントとなります。例えば、交渉ごとなどで高い位置から相手を威圧すれば、相手を説得しやすくなります。つまり、背が高い人の方が有利ということになります。
 
 たとえ背が低い人でも、椅子を高くするとか、座布団を重ねて高い視線を演出するといった方法で対処できます。

 前かがみの姿勢では、相手に卑屈なイメージを与えてしまいます。

 2002年9月に北朝鮮を訪問し、金正日主席との日朝交渉に臨んだ小泉純一郎首相(当時)は、握手を交わすときは、決して頭を下げることなく、相手を見下ろすようなポジションをとっていました。背筋をピンと伸ばし、威厳を示したのです。



*相手の集中力を削ぐ工夫をする。

 スターを世に送り出すには、そのスターの卵に「オーラ」を持たせることが重要だと説くのは、音楽プロデューサーの稲葉瀧文さん。荒井由実(松任谷由実の旧姓)や矢沢永吉といったミュージシャンを売り出し、まだ無名だった久保田利伸を世に出した人物です。

 スターを売り出すには、スター性を世にアピールしなければなりませんが、その「演出」も、交渉ごとと通じるところがあると言います。

 「交渉はいわば心理戦です。スターを売り出すには、ファンの心をそのスターに集中させますが、交渉ごとでは、相手の集中力を削げば、自分に有利に働くようになります。それにはまず、自分が相手より有利なポジションをとることです」

 稲葉さんが交渉で使った「演出」の一例を、ここで紹介しましょう。交渉ごとをするとき、稲葉さんは窓をを背にする位置に座り、相手を壁際に座らせるようにするそうです。自分の姿が逆光になる位置に座れば、相手はこちらの表情が読み取りにくくなり、不安心理が芽生えます。

 その結果、交渉のペースは窓際に座った者が握ることになります。

 加えて、集中力を削ぐ効果もあります。窓際に座った相手に向かっていると、外の風景にも視線が移り、そちらにも気を取られてしまうのです。これは、集中力を削ぐ効果があります。稲葉さんは、重要な交渉のときは、自分が座る後ろの窓の清掃を必ずやらせていたといいます。