朝の気は鋭く、昼の気は惰(だ)、暮の気は帰(き)なり

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現代訳

 敵兵の気力を奪い、敵将の精神をかき乱すことが重要だ。

 朝方は気力がみなぎり、昼間になればその気力は萎え初め、さらに日が暮れる頃になると、気力は尽きてしまう。

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相手の気が緩んだときを狙え!


*朝方に大切な会議や仕事を集中させ業績アップ!

 人間の集中力が、午前中にもっとも高まることは、よく知られた事実です。

 そのため「ノー残業デー」を設定し、午前中に需要な仕事や会議を設ける企業もあります。下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンは、吉越浩一郎社長(当時。2006年に社長を退任し、現在は吉越事務所を設立)のリーダーシップのもと、ノー残業デーを導入して、大きな成果を上げることとなります。

 最初は、金曜日をノー残業デーとして、18時半には消灯。やがてそれを拡大し、すべての日を残業禁止としたのです。

 さらに、毎朝8時半から早朝会議を開くなど、午前中の時間を有効に使うようにしました。

 その結果、生産性は格段に高まり、19年連続で増収増益を達成。その間、社員数が半分になったにもかかわらず、売上げは5倍増になったことからも、いかに仕事の効率化に成功し、生産性が高まったかがわかるというものです。

 このように、人間の集中力が高まっている午前中に重要な仕事を持っていくることで、仕事の効率をよくすることができるのです。


*相手の集中力が低下したときを狙って交渉する。

 この、「人間の集中力が午前中に高まる」というメカニズムを逆手にとった仕事を心がけているビジネスマンもいます。

 「人間の集中力が午前中に高まる」ということは、逆に言えば、「夕方は集中力が衰える」というわけで、「敵」の気力が萎え、集中力が弱まった夕方に、例えば上司に企画をぶつけたり、反論したり、また営業交渉をしたりと、「攻撃」を仕掛けるわけです。

 広告代理店に勤務する山形康司さん(仮名)は、営業に回る得意先に苦手な社長がいて、会いにくるのが億劫で、いつも気が重かったといいます。

 何しろパワフルなその社長は、山形さんのプレゼンテーションにことごとくケチをつけてくるのです。

 山形さんが嫌われているというのではなく、切れ者の社長だけに、理詰めで反論され、なかなか手ごわいのです。

 ところが、長く付き合っているうちに、山形さんはこの社長の“習性“みたいなものがつかめてきました。

 朝から「飛ばしている」社長は、夕方になると、ガクンと気力が萎えてくることがわかったのです。

 そこで山形さんは、その得意先を訪問するのは、夕方にするようにしました。朝方飛ばしすぎたその社長は、夕方は疲れ気味で、山形さんの提案をそのまま受け入れる確率がグンと高くなったといいます。